18 MAY, 2023

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WA HOUSE :
A MODERN FISHERMAN'S HOUSE
 

関西を代表するリゾート地、南紀白浜の圧倒的な自然の中で、グエナエル・ニコラは、力強い佇まいでありながら謙虚さを感じさせるモダンなフィッシャーマンズハウスをつくりました。 場所は国立公園にも指定されている南紀白浜の海沿い。ニコラの生まれ育った大西洋を思わせる荒々しい岩場にそびえたつ家は、自然をありのままに受け入れながら、かつ自然と対峙すべく、建築事務所ハレトケと共に、思慮深く設計されました。

 

直線的な平屋建ての家屋は、建物の高さが海の水平線とほぼ重なり、自然に圧倒されることのないように設計されています。この家屋を特徴づける翼のようなユニークな形状の屋根は、海洋に面した家屋を強風から守るようにデザインされています。


 

岩場の上に持ち上げるかのように支えるコンクリートの土台に、丁寧に建てられた家屋。嵐の際には、大きな波がコンクリートの柱の下まで広がるほどです。 濃い外装の色彩が、岩礁の暗い色と周囲の自然環境と溶け込みます。


 

拡張された屋根により日陰がもたらされるテラス。ミニマムに削ぎ落とした彫刻のような佇まいは、気候風土に応じて生まれたヴァナキュラー建築への再訪を想起させます。家を守るのはたった一つの素材です。この極端な立地に適した焼杉だけを用いて仕上げました。


 

圧巻は眼前に180度広がる海。まるで海の上に建っているかのように感じさせるべく、可能なかぎりテラスを大きく取り、リビングとシームレスに繋いでいます。屋外と室内のつながりを強調すべく、家全体の床の素材は同じ仕上げで統一しました。

 

海の中から現れたようなアート作品が、この家のアクセントとして驚きをもたらします。 ソファの上には、石塚源太の漆アート。

 

リビングルームの中心に構える大きなモノリスのようなオープンキッチンは、大きな窓に対面し、海の風景を見渡しながらの料理やもてなしができます。 インテリアを構成する要素一つひとつが、プリミティブで本質的な自然との対話を呼び起こし、都会のライフスタイルによって薄れてしまった感情や感覚を呼び起こすようにデザインされています。キッチンに使用されているアートもまた、自然が作った大きな錆びたパネルです。

 

家のインテリアを構成するのは、二つの和室とアトリエ、広いリビングルームのみ。どの部屋も贅沢なまでに海に面しています。空間を自由に使える和室の利点を生かし、ゲストをもてなしたり、茶道を嗜んだり、寛いだり、用途が広がります。照明、ハンドル、スイッチなどの機能は全て黒い木材の直線に隠され、タイムレスで、原始的な空気感を強調しています。

 

インテリア全体の色彩と素材を選ぶ際の決め手となったのは周りの環境、土の色味や周囲に広がる自然のトーンです。質感のある壁からセラミックタイルのフロア、畳に至るまで、一貫して温かみのあるグレーで統一することで、開放感と連続性を醸し出しました。 部屋は全て、壁と一体化する大きな引き戸で仕切られ、家全体に広がりを見せます。

 

家の中の隠れ家として設計されたバスルーム。洗面所は天井から吊り下げられた特大のシェードから温かな光を浴び、プライベートな空間に安らぎと心地よさをもたらしています。

 

ブラックストーンの床を直に彫り抜いたかのような佇まいを見せる浴槽。自然溢れる周囲の雰囲気と相まって、素朴な姿がさらにプリミティブな感覚を醸し出しています。

 

周囲の厳しい環境から室内を守るべく、焼杉を用いた雨戸で完全に密閉できるのは、日本の古民家さながら。WA Houseが目指すのは、土着の建築とモダンの抽象的な原型との間に対話を生み出すことです。

PHOTO:

YASUTAKA KOJIMA / IKUNORI YAMAMOTO

GWENAEL NICOLAS

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